職場にあふれる『コツ』や『ノウハウ』をどのように生かしていくか

2015年04月06日

ビジネスマンとして、仕事を進めていく上で『知識を得る』ことはとても重要です。
モノを作る技術だったり、人を納得させる話術だったり、書類にまとめるテクニックだったり、ビジネスマンは、常に何かの知識を習得し続ける状況にあると言えます。
 
昨今、知識は、“マニュアル”から習得することが全盛で、何を学ぶにしても、まず文章や映像などから学ぶ、というケースが多々あります。でも、実はみなさんは、マニュアルだけでなく様々なパターンから知識を習得しているのではないでしょうか。
 
さて今回は、知識を得ることから一歩進んで『創造する』プロセスについて、紹介させていただきます。
 
ナレッジマネジメントなんて言葉もありますが、知識をいかにカタチにしていくかということは、個人にとっても企業にとっても重要な課題となっています。
  ※ナレッジマネジメント=個人の知識を組織で共有し、業績を上げるという経営手法。
 
『知識創造企業』(野中郁次郎+竹内弘高著、1996)では、知識を創造し、ナレッジマネジメントとして構築していくプロセスの一つとして『SECIモデル』(セキモデル)の理論が提唱されています。
SECIモデルにおいては、『暗黙知』と『形式知』の2つの知識が、個人・集団・組織の各レベルにおいて絶え間なく変換・転換を繰り返すことによって、新たに、より高度な組織的な知識として創造されていくとされています。
 
★ 暗黙知:言葉や図式として表現できないが、経験やカンによって支えられているノウハウやコツといった知識のこと。一番身近な例では自転車の運転がそう。自転車に乗る技術や体感を、言葉や文字で表現することは難しく、練習を重ねることである時から乗れる=暗黙知を習得した状態になるのである。
 
★形式知:暗黙知の対義語。言葉や図式、数式などで表現できる知識のこと。一般的な例は、組織が作成した作業手順やマニュアル書など。
 
また、この創造のプロセスは、『共同化(Socialization)』、『表出化(Externalization)』、『連結化(Combination)』、『内面化(Internalization)』の4つの変換モードから構成されています

 

 

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それぞれの意味は次のとおりです。
 
★共同化(Socialization)=S
暗黙知を共通体験などから先輩から後輩へ、上司から部下へといった仲間内で共有・伝達するプロセス、及びその体験を基に新たな暗黙知を創造するプロセス。
例として、徒弟制度の下で親方の仕事を観察・模倣・訓練することで弟子が技能を体得するプロセス、企業におけるOJTなどがある。
 
★表出化(Externalization)=E
直接経験した範囲の人々の間でしか共有できない暗黙知を広く第三者にも分かりやすく共有できるように言語化したり、図式化したりして形式知に変換するプロセス。
例として、研究開発チームが新製品のコンセプトを作り出すときや現場のベテランの技能・ノウハウをマニュアルに落とし込もうとする行為がある。
 
★連結化(Combination)=C
形式知化された知識を分析したり、組み合わせたりして、バラバラだった知識を新しく、高度な形式知としてまとめ、組織レベルの形式知に変換、創造していくプロセス。
例として、コンセプトに基づき個別のアイデアを総合して製品化につなげることや、資料(これまでの形式知)を見て新しい手法を思いつく、既存のマニュアル書に新しい知識を足してリバイスしていくといった行為がある。
 
★内面化(Internalization)=I
連結化し広く利用が可能になった形式知を基にして、個人レベルで学習し、自らのノウハウ、スキル(=新たな暗黙知)として腹に落として体得するプロセス。
例として、マニュアル書の内容を現場で実践する。新しい手法を実際に取り入れて業務をこなし、自分のものにするといった行為がある。

 中小企業診断士 アンドウ・ユタカ 執筆者紹介

 中小企業診断士 アンドウ・ユタカ

資金調達や財務分析に長年取り組んできた経験を生かし、「経営で生じた会計・ファイナンスの疑問点をシンプルにわかりやすく解説すること」をモットーに、企業内診断士として活動しています。

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