役員報酬を損金に算入することはできるの?

2015年04月23日

①定期同額給与
定期同額給与とは、支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で、かつ、その事業年度内の各支給時期における給与額が同額であるものや、それに準ずる給与のことをいいます。
難しい言い方ですが、いわゆる毎月の役員報酬は損金に算入できます。ただその役員報酬の額を勝手に途中で変更すると、全額を損金として認めることはできなくなりますので注意してください。
とはいっても、事業年度ずっと役員報酬が同額ということもありえません。実際には改定することも当然あるからです。
 
特に決算が終わったら定時株主総会を開催します。その定時株主総会で次期の職務執行期間の役員報酬を決める際、その額を改定したらどうなるの? と疑問に思うことでしょう。
改定そのものを全否定しているわけではないので安心してください。
 
損金として認められる改定として
 
  a. 通常改定
  b. 臨時改定事由による改定
  c. 業績悪化改定事由による改定
 
が掲げられています。今回は「a. 通常改定」についてみていきたいと思います。
 
通常改定とは、会計期間開始の日から3月を経過する日までにされた改定をいいます。つまり、決算後の定時株主総会で次期の職務執行期間の役員報酬を決めたら、それをその期はずっと続けて支給してくださいということです。
 
たとえば3月決算の場合、平成27年5月に定時株主総会を開催し、その定時株主総会から平成28年の5月の定時株主総会までの役員の職務執行期間の報酬を決めたとします。平成28年3月期は平成27年4月、5月は70万円、6月以降は80万円となります。この場合、「その事業年度内の各支給時期における給与額が同額であるもの」には該当しませんが、通常改定による改定なので「それに準ずる給与」に該当し、全額損金の額に算入されます。
 
②事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、定められた期限までに所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているものをいいます。
この事前確定届出給与も定期同額給与と同じく、定時株主総会で支給額を決議してください。
この届出書の提出期限は一般的な中小企業の同族会社であれば、決議した定時株主総会から1ヶ月を経過する日となっていますが、忘れないよう法人税等の申告書を提出するときに一緒に提出しておくことをおすすめします。
 
届出書には支給する役員の氏名や支給額のほか、定期同額給与としない理由やその支給時期の理由なども記入しなければなりません。
 
こうして、本来、損金算入が認められていなかった役員賞与を事前に届出をすることにより、損金の額に算入することができます。
 

3. まとめ

この定期同額給与と事前確定届出給与は、必ずしも株主総会で決定しなければならないわけではありません。
役員報酬の年間総額、又は算定方法を株主総会での決議によりあらかじめ定めておき、個々の役員に支給する具体的な金額の決定は取締役会に一任するのが一般的です。
そのような場合も株主総会で決議したのと同じ意味となります。
 
3月決算の法人にとって4月、5月というのは、一事業年度を終え、その事業年度について利益や税額を早期に把握するだけでなく、次の役員報酬をどうするか、ということも同時に決めなければならない大切な時期でもあります。
 
顧問税理士の力を借りつつ、業績を慎重にシミュレーションして決めてくださいね。

岩嵜・杉原合同事務所 税理士 杉原麻友子 執筆者紹介

岩嵜・杉原合同事務所 税理士 杉原麻友子

平成21年7月開業。
著書「団塊世代サラリーマンのための定年退職マニュアル 厚生年金・雇用保険・健康保険の手続きと確定申告がわかる本」(共著)(税務研究会)
ホームページ http://sugihara-accounting.com/
ブログ(大阪の女性税理士sugiの天満橋日記) http://ameblo.jp/sugihara-accounting/

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