事業主も労災保険に入れるの? 保険料は?

2015年04月02日

今回は労災保険の中小事業主等の特別加入についてご説明したいと思います。
新年度ということもあり、私のお客様でも建設業者さんを中心として、4月から特別加入される事業主の方がかなりいらっしゃいます。
 

労災保険とは?

労災保険は、労働者の業務災害及び通勤災害に対する保護を主たる目的とするものであり、本来は事業主、自営業者、家族従業者など労働者以外の方は対象になりません。
しかし、業務実態や災害の発生状況その他からみて「労働者に準じて」保護することが適当である方もいらっしゃいます。
これらの方を労災保険の適用労働者とみなして業務災害及び通勤災害について保険給付等を行うのが「特別加入制度」です。
中小事業主等(=中小事業主とその事業に従事する人)は、第1種特別加入者としてその対象となります(ほかに第2種・第3種特別加入者があります)。
 

「中小事業主とその事業に従事する人」とは?

常時300人(卸売業又はサービス業は100人、金融業・保険業・不動産業・小売業は50人)以下の労働者を使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときはその代表者)であって、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託している者をいいます。
その事業に従事する人には、(労働者は当然として)家族労働者や代表者以外の役員も該当します。これらの人は、包括適用され中小事業主が特別加入した場合には、一緒に特別加入をすることになります。
 

中小事業主等の特別加入手続き

中小事業主等の特別加入の申請は、上記の事務組合を通じて行うことになります。
具体的には、事業主が、加入に際して速やかに、特別加入申請書(有害業務の場合は健康診断書添付)を、所轄労働基準監督署を経由して都道府県労働局へ提出します。
 

給付基礎日額と特別加入保険料について

労災保険料は、通常は年間賃金総額に労災保険料率を乗じて求めますが、特別加入者は労働者と異なり「賃金」にあたるものがないため、これに代わり「特別加入保険料算定基礎額表(3,500円~25,000円の16種)」が定められています。その表の「給付基礎日額」をベースに保険料を算定することになるわけです。
具体的には「給付基礎日額」×365日=「保険料算定基礎額」に対し、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものが「年間保険料」になります。
したがって、特別加入者の所得水準に見合った適正な額を申請することが重要になります。
 
≪保険料の計算例≫ その他の製造業の場合(労災保険率 6.5/1000)
給付基礎日額を6,000円にすると、保険料算定基礎額は2,190,000円(6,000円×365日)で、
年間保険料は2,190,000円×6.5/1000=14,235円となります。
 
中小企業の事業主の方は、一般に労働者の方と同じような業務をしたりすることが多いため、事業主であるからと言って労災に入れないのは保護に欠けるのではないかという意見があり、この特別加入制度ができたそうです。
ですので、事業主の方が「事業主として資金繰りの算段に銀行へ出かけた際に交通事故にあった」等という事業主としての業務中に発生した災害については保険給付等が行われません。
あくまでも労働者の方と同様の業務をされている時が対象となります。

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美 執筆者紹介

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美

2003年社会保険労務士、2004年行政書士登録。人事労務のエキスパートとして「正確・迅速・分かりやすく」をモットーに日々業務を行っています。
横地冬美事務所 http://yokochi-office.net

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