起業後の社会保険、労働保険等の手続きについて

2015年07月06日

 大きな希望や目標を胸に抱いて、個人事業を始められたり、会社を設立された後には、どのような手続きが必要なのでしょうか。
 今回は起業後の各種手続きについて、社会保険労務士の視点からご説明いたします。

 

社会保険について

 起業されるまでサラリーマンだった方は、職場の社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入されていた方が多いと思います。起業後は、その形態によって以下のとおりとなります。
 
   個人事業を開始した場合 ⇒ 国民健康保険 + 国民年金
   会社を設立した場合 ⇒ 健康保険 + 厚生年金保険

 
 手続きとしては、サラリーマンから個人事業を開始された場合には、お住まいの市区町村役場で国民健康保険と国民年金の加入手続きを行います。
 会社を設立された場合には、会社の所在地を管轄する年金事務所で健康保険と厚生年金保険の加入手続きを行います。
 この場合のポイントとしては、会社等の法人は社会保険の強制適用事業所であるということです。したがって、会社設立当初は社長のみで従業員が一人もいないという場合であっても、社会保険には加入しなければならないので注意しましょう。
 
 

労働保険について

 サラリーマン時代は労災保険や雇用保険といった労働保険に、ご自身が被保険者として加入されていたことと思います。しかし、ご自身で起業されて、個人事業主や社長等の事業主になると労働保険の被保険者には該当しません。
 
 その一方で、起業して従業員を一人でも雇用すると、事業所として労働保険に加入する必要があります。
 この場合のポイントとしては、パートタイマーやアルバイトといった短時間しか働かない労働者であっても労働保険に加入する義務があるということです。労働保険のうち、労災保険については所定労働時間が短い労働者でも被保険者となるからです。雇用保険の被保険者については、週の所定労働時間が20時間以上で31日以上雇用されることが見込まれる等の要件があります。
 
 労働保険の加入手続きは、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署とハローワークで行います。
 
 

労働者を雇用した場合のその他の手続きについて

  適用事業報告 ⇒ 労働基準監督署へ提出(労働基準法の適用事業所になった旨の報告)
  時間外労働・休日労働に関する労使協定届 ⇒ 労働基準監督署へ提出(時間外労働、休日労働を労働者へ行ってもらう場合に必要)

  
 以上、簡単に起業後の手続きについてご説明いたしましたが、社会保険も労働保険も保険料が発生するものですので、その点も事業の経営にあたっては考慮していく必要があります。
 特に、労働者を雇用する場合には、その労働者へ支払う賃金に対して、各種保険料がかかることを考えた上で賃金額を決定されることが重要といえます。
  
 起業されたばかりの事業主の方から「保険料も高いので事業が軌道に乗るまでは社会保険には加入しないでもいいですか?」等のご相談を受けることもありますが、法律で加入が義務づけられている場合にはきちんと手続きを行っていないと様々なデメリットが考えらえます。
 
 例えば、ハローワークに求人の申込みをしようとしても会社等の法人の場合には社会保険に加入していないと受け付けてもらえませんし、厚生労働省管轄の助成金や補助金については社会保険に加入していることが支給要件のものも多くあります。
 
 また、事業主の方と一緒に事業の発展や繁栄のために頑張ってくれるような優秀な人材(労働者)は、やはり安心して働くことのできる環境が整っている職場に集まってくるものだと思います。そういった点から考えても、法に則った事業の運営を行っていくことが大切ではないでしょうか。

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美 執筆者紹介

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美

2003年社会保険労務士、2004年行政書士登録。人事労務のエキスパートとして「正確・迅速・分かりやすく」をモットーに日々業務を行っています。
横地冬美事務所 http://yokochi-office.net

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