6-3 各種引当金の設定

各種引当金の設定

(1)引当金の設定条件

引当金とは、将来の費用または損失に対して設定するものです。企業会計原則では、引当金が設定できるのは、次の要件を満たす場合としています。
①将来の特定の費用または損失であること。
②その発生の原因が当期以前の事象に基因していること。
③その費用または損失が発生する可能性が高いこと。
④その費用または損失の額を合理的に見積もることができること。

(2)引当金の種類

将来の費用または損失に対する引当金で、上記(1)の要件を満たすものは、引当金を設定することができます。この引当金の中でも、よく設定されるものは次の引当金です。
①貸倒引当金
貸倒引当金は、将来の売掛金等の貸倒に備えて設定するものです。
②返品調整引当金
返品調整引当金は、出版業界等の返品に備えて設定するものです。
③特別修繕準備金
特別修繕準備金は、何年かに1 度周期的に大規模な修繕を行う場合、その修繕費に備えて設定するものです。

ここでは、貸倒引当金について説明します。

(3)貸借対照表上の表示個所

引当金は、将来の費用または損失に対するものですから負債項目として、負債の部に記入されます。また、資産の部に控除項目として記載されるものに貸倒引当金があります。

(4)引当金の設定仕訳

引当金を設定する場合には、次のような仕訳により費用に計上します。

(借方)×××引当金繰入  ○○○   (貸方)×××引当金  ○○○

引当金の設定額が多い場合等には、次の仕訳により収益に計上します。

(借方)×××引当金  ○○○   (貸方)×××引当金戻入  ○○○

 

貸倒引当金

貸倒引当金は、売掛金・受取手形等の債権の貸倒による損失に備えるものであり、期末資本金の額により債権金額に一定の率を乗じて計算する方法等により設定します。これは、法人税法により規定されています。

(1)貸倒引当金の設定額

貸倒引当金の設定額は、次の算式により計算されます。
貸倒引当金の設定額=期末貸金の額× 繰入率+取立不能見込額
(中小企業の特例)
貸倒引当金を損金として処理できるのは、中小企業に限られています。中小企業とは、期末資本金の金額が1億円以下の会社(相互会社を除く)をいいます。

(2)期末貸金の額

期末貸金の額とは、売掛金・貸付金・受取手形・裏書手形・割引手形等をいいます。
また、次のような債権は、期末貸金の額に含まれませんので注意して下さい。
①上記(1)の取立不能見込額の対象となった金銭債権
②預貯金または公社債の未収利子・未収配当等
③保証金・敷金・預け金等
④手付金・前渡金等のように資産の取得価額又は費用の支出に充てるもの
⑤前払給料・概算払旅費・前渡交際費等のように将来精算されるもの
⑥雇用保険法に基づき交付を受ける給付金等の未収金
⑦仕入割戻の未収金等

(3)繰入率

繰入率には、次の2 つの種類があります。
①実績率
実績率とは、過去の貸倒実績により次の算式により計算したものをいいます。

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②法定繰入率
この繰入率は、会社の業種区分により次のようになります。

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(4)取立不能見込額

取立不能見込額とは、会計上でいう債権償却特別勘定とほぼ一致します。取立不能見込額とは、次のような事実が生じている場合のそれぞれに掲げた金額です。
①更生手続きの申立等
次に掲げる事実が生じた場合に、その金銭債権の額の50%に相当する金額。
・会社更正法等による更正手続開始の申し立て
・和議法による和議開始の申し立て
・破産法による破産の申し立て
・商法による整理開始又は特別清算開始の申し立て
・手形交換所による取引停止処分
②更生計画許可の決定等
次に掲げる事実が生じた場合に、その金銭債権の額のうち5 年以内に弁済されない金額。
・会社更正法等による更正計画許可の決定
・和議法による和議又は破産法による強制和議の許可の決定
・商法による特別清算に係る協定の許可又は整理計画の決定
・債権者集会の協議決定等
③債務超過の相当期間継続の場合等
・債務超過が相当期間継続して取立の見込がないと認められる場合、その取立見込がないと認められた金銭債権の額等

(5)貸倒引当金の設定方法

貸倒引当金の設定方法には、「洗替法」と「差額補充法」の2 つの方法があります。