フレックスタイム制と年次有給休暇の正しい扱い方 ~企業が押さえるべき実務ポイント~
2026年01月08日
フレックスタイム制では、社員が柔軟に働ける一方で、年次有給休暇の処理方法が複雑になりがちです。特に所定労働時間の計算や控除方法を誤ると、トラブルに発展する可能性があります。本記事では、制度を正しく運用するために必要な考え方と、実務で役立つ処理手順をわかりやすく解説します。

1.フレックスと有休を両立させるために最も大切な視点
結論として、フレックスタイム制における年次有給休暇は「その日の所定労働時間をどのように扱うか」を軸に処理することが重要です。社員が自由に時間を配分できる仕組みだからこそ、会社側が統一したルールを明確にしないと混乱が生じます。
2.正しい処理が必要となる理由
フレックスタイム制は、社員が働く時間の長さが毎日異なる点が特徴です。しかし、年次有給休暇は「労働義務を免除する制度」であるため、休暇を取得した日にも通常の所定労働時間を付与する必要があります。
この考え方が不明確だと、以下のような問題が起こりやすくなります。
・有休取得日に労働時間が不足していると誤認する
・清算期間の総労働時間が狂う
・社員に不利益な取り扱いとなり紛争リスクが生じる
・管理担当者が毎回の処理で迷う
こうしたズレは、フレックス制のメリットを損ねるだけでなく、制度自体の運用負荷を大きくします。
3.年次有給休暇の正しい処理方法
フレックスタイム制と年次有給休暇を調和させるには、「休暇取得日に付与する時間数」を事前に決めておくことが欠かせません。ここでは、実務で押さえておくべきポイントを整理します。
①有休取得日は「所定労働時間を付与する」
フレックスタイム制であっても、有休取得日は社員が働いたものとみなし、会社が定める所定労働時間(例:1日8時間)を労働したと扱います。
勤務実績がゼロであっても、清算期間の総労働時間に「8時間」などの定められた時間を計上します。
②所定労働時間は就業規則で明確にする
フレックス制では「コアタイムの有無」「標準となる1日の所定時間」を曖昧にしがちですが、年休処理においては必須情報です。
最低限、次の内容は明示しましょう。
・標準となる1日の労働時間(例:8時間)
・清算期間の総所定労働時間の計算方法
・有休取得時の扱い(所定労働時間を付与する旨)
これらを文書化しておくことで、判断がぶれず、担当者の負担も軽くなります。
③半日・時間単位の年休は区分を明確に
フレックス制は時間の自由度が高いため、時間単位年休との相性も良い制度です。
ただし、区分を曖昧にすると計算誤差が出るため、次の点を整理します。
・半日年休は「何時間分」とするのか
・時間単位年休の最小単位(例:1時間)
・清算期間へ計上する時間数のルール
特に半日年休は「午前・午後」という概念が薄いため、必ず“時間数”で管理することが実務的です。
4.清算期間の総労働時間への反映
有休取得日に付与する所定労働時間は、清算期間の総労働時間にそのまま算入します。
これは、清算期間の途中で労働時間の過不足を正しく把握するために不可欠です。
少し例えれば、フレックス制の清算期間は「バケツ」に似ています。
働いた時間も有休の時間も、バケツに入る“水の量”としてきちんと管理することで、溢れたり不足したりすることが防げます。
5.正しい年休処理のために企業が今すぐ取り組むべきこと
最後に、企業が取るべき実務アクションを整理します。
・就業規則に1日の標準労働時間を明記する
・有休取得日の処理ルールを文書化し全社に周知する
・半日・時間単位年休の時間数ルールを統一する
・勤怠システムで計算方法が正しく設定されているか確認する
・担当者が迷わない運用フローを作成する
これらを整備することで、フレックス制と年次有給休暇の管理がスムーズになり、社員にも会社にもメリットが生まれます。