離婚は死亡率を30%高くする!?

2016年08月18日

男女の問題は、恋愛と結婚という現実的なことだけでなく、健康、さらには寿命にまで影響することが最近わかってきた。
 
ストレス強度から言うと、配偶者の死が一番大きいとされる。その影響によるのか、以前から40歳以上の独身男性は7年くらい寿命が短くなるとか、男性、独身、喫煙の3つがそろうとより寿命を縮めると言われてきた。
また、いままでは女性にはストレス耐性があり、独身というだけでは短命にならないと言われてきた。しかし、最近の研究報告によれば、男性だけはなく、女性も離婚などが病気のリスクや寿命に影響することがわかってきた。
 
つまり男女の関係なく、結婚、離婚、再婚などが健康や長生きに大きく影響しているのだ。
長寿の時代、夫婦が長い間、仲良く暮らしていくのは大変である。外来に来ている80歳を超えるような夫婦でも、「合わないんですよね」と診察室で奥さんが本音を漏らすことも多い。
しかし、そうであっても、以下のデータを見ると、長生きを考えるなら離婚しないほうが重要なことのようだ。 
 
既婚者は独身者(離婚、未婚、死別)より死亡率が12%低いと、大規模な解析でわかってきた。
日本でのデータでは、結婚歴のない独身男性は、既婚男性に比べ心筋梗塞などの心臓の病気で死亡する危険が3倍になるという。女性でも、心臓病のリスクにはならないとしているが、死亡率自体は1.5倍に上がる。
 
海外のデータでは男女の差はあまりなく、独身者は既婚者より心筋梗塞などの病気で死亡する確率が2倍近いとしている。
アメリカでは、女性で離婚歴1回で心筋梗塞になるリスクは24%、2回以上の離婚では77%のリスクに上がる。これは喫煙や高血圧と同じレベルのリスクである。そして、この女性が再婚してもリスクの軽減はないとしている。
 
日本のデータでは、離婚した人は死亡率が30%高くなる。さらに、男女ともに離婚によって脳卒中が増加するという報告もある。やはり離婚はストレスとして大きなものなのだろう。
結婚しても喧嘩ばかりする夫婦や、相手の浮気によるストレスなどを考えると、離婚してしまったほうがストレスもなく、健康に暮らせるように思う。しかし、統計的には離婚せずに結婚を維持したほうが長生きできそうである。
 
生涯独身で気楽な人生がいいという選択もあるかもしれないが、実際には気楽というより、一人での生活は健康管理がいい加減になりがちだ。不安や心配ごとを抱えたときに、話し相手がいるといないでは、ストレスを早く回避することを考えれば大きな問題なのだ。
 
また、別の視点もある。
いわゆる億万長者を調べた研究では、初婚を維持している人が多い。むろん離婚すれば財産が減ってしまうから、離婚しないほうが財をなすためには重要な要素であろう。ただ、それだけではなく、長い結婚生活を維持できる精神的な能力が、ビジネスでも重要になってくるのであろう。カッとなって相手を罵倒したり、怒りを直接ぶつけるようでは、結婚を維持していくことは難しいだろう。
 
常に心を穏やかにできる能力は、健康維持にもビジネスにも必要な能力なのだ。
夫婦間のいろいろな問題を解決していくことは、結局、自分の長生きにつながるわけで、そう考えれば、配偶者をもっと大切にしようと思うのではないだろうか。

 作家・医学博士 米山公啓 執筆者紹介

 作家・医学博士 米山公啓

1952年山梨県生まれ。作家・医学博士。専門は神経内科。1998年に聖マリアンナ医科大学内科助教授を退職。現在は週4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けるかわたら、実用書や医学ミステリーなどの執筆から、講演、テレビ・ラジオ出演など、幅広い活動を行っている。著作は280冊を超える。主な著作には「もの忘れを90%防ぐ法」(三笠書房)「脳が若返る30の方法」(中経出版)「健康という病」(集英社新書)など。趣味は客船で世界中の海をクルーズすること。

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