介護離職で優秀な人材を失わないために

2016年09月02日

現在、少子高齢化が進み、親や家族の介護のためにやむを得ず仕事を辞める「介護離職」が増加しています。
特に、介護の課題に直面する40~50代は、管理職など企業の中核となるポストについている人が多く、優秀な人材の損失、急な離職により業務に支障をきたすなど、企業にとってもますます深刻な問題となっていくことでしょう。
 
厚生労働省では、介護が必要なご家族を抱えながら仕事を続ける方々の「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」を推進するために育児・介護休業法を改正し、平成29年1月1日より施行することを発表しました。
 
今回は、改正後の介護休業についてご説明しますので、介護に関する企業法制度の拡充、職場環境の整備に役立てていただきたいと思います。
 
 

介護休業

労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業です。
※要介護状態=負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
 
≪対象労働者≫
①労働者(日々雇用を除く)
②労使協定により対象外にできる労働者
・雇用期間が1年未満の労働者
・93日以内に雇用期間が終了する労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
③有期契約労働者は、申出時点において、次の要件を満たすことが必要
・雇用期間が1年以上
・介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日(93日経過日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)
 
≪対象となる家族の範囲≫
 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、また、同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫
 
≪期間≫
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能
 
≪回数≫
対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回
 
 

介護休暇

要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護その他の世話を行うための休暇の取得が可能です。
※取得については、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能
 
≪対象労働者≫
①労働者(日々雇用を除く)
②労使協定により対象外にできる労働者
・雇用期間が6か月未満の労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
 
 

介護のための時間外労働の制限

要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその家族を介護するために請求した場合には、事業主は制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて時間外労働をさせてはならない。
 
≪対象労働者≫
①要介護状態にある対象家族を介護する労働者
②対象外にできる労働者
・日々雇用される労働者
・雇用期間が1年未満の労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
※配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合等の労働者は対象外にできない
 
≪期間≫
1回の請求につき、1か月以上1年以内の期間
 
≪回数≫
請求できる回数に制限なし
 

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美 執筆者紹介

横地冬美事務所 特定社会保険労務士・行政書士 横地冬美

2003年社会保険労務士、2004年行政書士登録。人事労務のエキスパートとして「正確・迅速・分かりやすく」をモットーに日々業務を行っています。
横地冬美事務所 http://yokochi-office.net

横地冬美先生のコラム一覧へ≫