テレビを見なくなった日々

2016年09月13日

「夢であいましょう」というバラエティ番組の草分け的番組が、私が小学生の頃にあって、非常に楽しみにしていた。
「ベン・ケーシー」というアメリカの医療ドラマもあり、とにかくその番組を毎週見るのが楽しみだった。むろんビデオ録画などできない時代だから、見逃したら終わりで、番組が始まる間際になるとそわそわしていたのを覚えている。
当時はテレビ時代の幕開けでもあり、番組自体が非常に真剣に作られていた感があった。昼の連続ドラマなど生で放送していた時代である。作り手の緊張感もすごかったのであろう。
 
しかしである。いまやテレビ番組はお笑いとアイドル系タレントが仕切るバラエティ番組ばかり、ドラマといっても海外ドラマに比較すれば、あまりになさけない脚本など、はっきり言って見るに堪えない。
ニュース番組でさえ、タレントといつものコメンテーターが並んで、見ている側が思っていることを述べているだけである。海外のニュース番組では、一人のアナウンサーと現場からのレポーターで、日本のニュース番組のようにMCが皮肉など言わず、事実だけを報道していく。
 
こんな状況のテレビ番組はさすがに見なくなった。
それは私だけでなく、50歳以上は基本的にはテレビを見ていない。20代の若者にいたってはテレビを持っていないという。
相変わらず視聴率を問題にするテレビ業界であるが、実質的な視聴数はかなり減っているはずである。だが、はっきりしたデータは出していない。スマホのテレビあり、オンデマンドありの今にもかかわらず、昔ながらの視聴率という考えがテレビ業界をいまだに席巻している。
 
私もかつてテレビの健康番組にさんざん出演していたが、あまりの内容のばかばかしさに、最近では基本的には出演しないようにしている。以前はちゃんとした特定の医療の専門医が出演していたが、最近ではテレビ局側の脚本通りに話をする医者の方が受けがいい。
 
テレビを見なくなった変わりに、海外のテレビドラマをネット配信で見ている。毎晩寝る前に海外ドラマを見るのが最高の喜びになっている。
オンデマンドでiPadなどで寝転んで見ることができ、いつでもどこでも続きから見られるのがいい。
海外のネット配信会社がオリジナルドラマを作るので、スポンサーの影響がなく、まったく自由なテーマでいろいろな業界に切り込んだドラマも作れる。だから圧倒的に面白く、どうしてこんな脚本が作れるのか驚かされるばかりだ。
そこには海外の俳優の層の厚さもあるのだろう。日本のテレビドラマのように同世代のイケメンの俳優だけではなく、本当に悪者風の俳優が演技をするので、リアリティも違ってくる。
 
外国人が喜び評価する日本の文化という日本のテレビ番組も多いが、ハリウッド映画や海外のテレビドラマと比較すれば、もはや小学生と大学生のひらきができてしまった。
黒澤明監督がいた時代、あれだけの映画が作られ、永六輔や大橋巨泉があれだけ面白いテレビ番組を作っていたのに、なぜ、それを引き継げなかったのか不思議である。
 
こんな時代でもまだテレビの持つ影響力は大きい、だからこそもっと質の高いテレビ番組を作って欲しいと思うばかりだ。

 作家・医学博士 米山公啓 執筆者紹介

 作家・医学博士 米山公啓

1952年山梨県生まれ。作家・医学博士。専門は神経内科。1998年に聖マリアンナ医科大学内科助教授を退職。現在は週4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けるかわたら、実用書や医学ミステリーなどの執筆から、講演、テレビ・ラジオ出演など、幅広い活動を行っている。著作は280冊を超える。主な著作には「もの忘れを90%防ぐ法」(三笠書房)「脳が若返る30の方法」(中経出版)「健康という病」(集英社新書)など。趣味は客船で世界中の海をクルーズすること。

米山公啓先生のコラム一覧へ≫